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077 ミトン

天気予報で雪マークを見かけるようになりましたね。
旧暦では今日までが小雪(しょうせつ)、明日から大雪(たいせつ)、本格的に寒くなってきそうです。
二十四の気という節気と、七十二もの候という季節の本は、毎年このくらいの時期から春にかけて
いちばん見返しているように思います。

ミトンのようでミトンじゃない、3又の手編み手袋、いよいよ出番になります*
今回は、このミトンを作った経緯なども含めて記したいと思います。

ニットの手袋は大好きなのでよく使っていたのですが、自転車に乗ることもあり、3年目くらいから穴が開いてしまいました。
細い番手の機械編みで、5本指に分かれていて、人差し指と中指に穴が空きました。
親指にだけ部分的に革が縫いつけてあったのですが、やはり革が縫い合わさってない部分は擦り切れてしまいました。
その後、鹿革の手袋を買い求めました。5本指に分かれライニング付きのものです。
リブ部分だけニットになっており、5-6年使用してライニングとニットの接合部分がほつれましたが、
革の部分は擦り切れていないので、手袋としてまだまだ現役です。
ライニング付きなので当たり前なのですが、ニットだけの手袋に比べるとやや重みがあります。
両方の良い点を整理してみたところ、ニットは質量としても軽くて、普段のスタイリングに合わせやすい気軽さがありました。

そんな過程から、指が適度に動き、毛糸が擦り切れない、あたたかい手袋があったらと、
2年前からSAKSUMI さんと試作をはじめました。

先ずは、「毛糸をどんなものにしよう」という課題でした。
ウールだけの毛糸はラフに使える印象で最後まで迷いましたが、羊革(シープシルキー)がとても柔らかいので、
使う上での相性を考えると、ウールにアルパカが混ざった毛糸にしました。

保温性に優れ手触りが良いため、親指・人差し指、そして中指・薬指・小指は、3つのスペースで程よく手袋とフィットします。
毛糸が擦り切れないよう選んだ羊革は、強度を残しながらも出来る限り薄くし、摩擦の起こりやすい部分へ手縫いで仕上げることで、動きやすくしています。

「長めのリブ」もテーマにありました。
この部分は自分では気がついていないところで、2021年のサンプルまでルーズにしていました。
SAKSUMI さんの提案で、手首もしっかり包み込んでくれる、現在の形になりました。
自転車に乗ったりと風を感じる場面にも、スースー風が隙間から入ってくるのを防げるようになりました。

最後に「羊革(シープシルキー)」について。
柔らかい革は、加工をすればたくさんあるのですが、毛糸がひつじ80%、アルパカ20%の毛糸なので、
自然な流れで、革もひつじにしていました。

色はベーシックな、ベージュとグレーの2色に絞りました。
手のひらにある羊革(シープシルキー)は、アイボリーとブラックです。

ここで課題となったのは、革の厚みでした。
0.7mmで試作を進めていましたが、少しごわつきが気になり、強度が残り、且つ、手袋にも馴染む厚み 0.5mm に漉くことにしました。
やわかくて、薄い革の手縫いはとても難しく、ちょっと引っ張ると伸びてしまいます。
が、そこは職人さんがきれいに仕上げてくださいました。

ニットが手編みで、羊革は手縫い
すべて手製という設計は、これまで意識的に行ってきませんでした。
2022年は10年目という節目もということと、当たり前ではない日常が2020年から長く続いたので、
夏休みの実験のようなアイディアでいろいろ試してみよう、という心持ちがあり製品化することが出来たように思います。

いつもと違うことを、違う方法で作って、試すことはやはり時間がかかりますが、初心に帰ることができました。
そして、納得するものが出来、安心しておすすめできること、嬉しく思います。
この仕様のミトンは今年限定のものとなりますが、もし何年ご使用になられてお直しされたいときは、お気軽にご相談くださいね。
浅草橋でもご覧いただけますので、ぜひ手に取っていただけたらと思います:)

(文/カンダ)